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本記事は、ファッションビジネスメディア「Oui Speak Fashion® Japan」に寄稿したレポートをベースに、当社代表取締役社長の柏木 又浩、および執行役員の西村 幹太をはじめとした海外視察チームの視点を加え、ビーツ独自の考察としてお届けするものです。
前回の記事(#04 AIは顧客を「ほしいもの」に導けるか?ファッションECの「発見」から考える体験設計)では、ファッションECにおける「発見」の課題と、AI活用の可能性からリアルな売場づくりにも通じる視点で考察しました。
今回は、デニムブランド「True Religion(トゥルーレリジョン)」が主催したZ世代フォーカスグループセッションをもとに、デジタルネイティブであるZ世代の購買行動や価値観、AIとの向き合い方から、これからの店舗体験について考えていきます。
Z世代の購買行動を考える上でまず注目したいのは、彼らが単一のチャネルに依存していないという点です。セッションに参加したZ世代の証言からも、彼らが各種SNSやプラットフォームを目的に応じて使い分けている実態が見えてきます。
| プラットフォーム | 主な利用目的 |
| インスピレーションの収集、ムードボードの作成など、購買の初期段階におけるアイデア探し | |
| TikTok | 製品のリアルな使用感や着用シーンの確認。「リアルな人々」による正直なレビューを重視 |
| ブランドの公式情報やニュースの入手。インフルエンサーによる製品レビューのチェック | |
| スポンサー付きコンテンツを排した、本物のユーザーによる偏りのない詳細なレビューの探索 |
※Reddit:アメリカ発の掲示板型SNSサービス
また、彼らはブランドからの過度な情報攻勢(プッシュ型マーケティング)を嫌う傾向にあります。マーケティング受信専用のメールアドレスを作って情報の洪水から自衛し、購入の意思が固まった時にだけ自ら情報を取りに行くという、巧みな情報管理を行っています。
Z世代にとって購買行動は、「広告を見る」「店舗へ行く」「購入する」という直線的な流れではありません。
気になる商品やブランドに出会い、複数の情報源で確かめ、自分にとって信頼できるかどうかを判断する。その過程の中で、オンラインとオフライン、公式情報とユーザーの声、AIによる提案と人からのレビューを行き来しています。
ブランド側に求められるのは、特定のチャネルだけを強化することではなく、さまざまな接点を横断しても違和感のない、一貫した体験を設計することではないでしょうか。
Z世代は、ブランド名だけで商品を選んでいるわけではありません。
セッションでは、製品そのものの品質や耐久性、そして背景にある「真正性(オーセンティシティ)」を重視する姿勢が語られました。中古プラットフォームを活用しながら長く使える品質の高い商品を探したり、ブランド名ではなく「フリルのついたシャツ」のような具体的な特徴、さらには「サルサダンスにも対応できる伸縮性」や「ポケットの有無」といった機能性と実用性をデザインと同等以上に重視する姿勢も紹介されています。
この価値観の変化は、店舗体験を考える上でも重要です。
店頭では、ブランドの世界観を美しく見せるだけでなく、その商品がなぜ選ばれるのか、どのような価値があるのかを伝えることが求められます。
例えば、素材の良さ、使い勝手や機能性、背景にあるストーリー。そうした情報に自然に触れられる売場は、来店者が自分の価値観に照らして納得するための手がかりになります。
Z世代にとっての店舗は、単に商品を手に取る場所ではなく、「自分に合っているか」「信頼できるか」を確かめる場所としての役割を持ち始めているのかもしれません。
リアルな声や商品の質を重視すると同時に、Z世代はデジタルツールとしてのAIを非常に合理的に活用しています。セッションでも、ChatGPTを使って割引コードを探したり、複数の小売店の価格を比較したりするなど、AIを自身の購買行動に活用している様子が語られました。
しかし、ブランド側が提供するAI体験に対しては、慎重な視線も向けています。
好みに合った商品を的確に提案するAIは評価しつつも、利用シーンや社会的文脈を無視した提案には失望する。AI生成コンテンツであることを明示しない表現には、不信感を抱く。カスタマーサービスでも、定型的な問い合わせにはAIの効率性を歓迎するものの、AIが人間のように振る舞うことには抵抗を示す。
ここから見えてくるのは、Z世代がAIを拒否しているのではなく、「ブランドがAIをどう使うか」を見ているということです。
効率化できるところはAIに任せる反面、専門的な相談や、自分の文脈を理解してほしい場面では、人による対応を求める。このバランス感覚こそが、これからの店舗体験やデジタル施策を考える上で欠かせない視点となります。
デジタル上で多くの情報が得られる時代だからこそ、実店舗の価値も改めて見直されています。
現地のセッションで提示されたアクションプランでも、Z世代は実店舗に「発見」や「学び」の体験を求めているとされています。実店舗は商品を売るだけの場所ではなく、ブランドの世界観に触れ、新たなインスピレーションを得られる空間として再定義していく視点が求められています。
こうした体験は、デジタルだけでは完結しにくいリアルな価値です。Z世代に届く店舗体験を考えるなら、商品を並べるだけでなく、発見や学びが自然に生まれる空間づくりが重要になります。
Z世代の購買行動は、オンラインとオフラインを分けて考えることの限界を示しています。SNS、レビュー、AI、店舗を行き来する彼らの心を掴むため、私たちビーツは、OMO時代の売場づくりにおいて、次の3つの視点が重要になると考えます。
来店前のSNSやWebと、来店中の店頭体験をなめらかにつなぐことが大切です。
オンラインで見た情報と、店頭で受け取る印象が大きく違っていると、ブランドへの理解は途切れてしまいます。
空間、什器、サイネージ、スタッフの案内を別々に考えるのではなく、一貫した「ひとつのブランド体験」として設計することで、ブランドへの理解はより立体的に深まります。
Z世代に届く売場には、「知らなかった」「試してみたい」と思えるきっかけが必要です。
商品を手に取りやすい什器、直感的に理解できるサイネージ、自然と会話が生まれる導線など、細部の設計を工夫することで、売場は単なる陳列スペースから「発見と学びの場」へと変わっていきます。
店舗DXやAIは、売場を支える有効な手段です。
ただし、すべてを自動化すればよいわけではありません。Z世代は効率性とともに、人間味も重視しています。
情報の提示や効率化はデジタルで支え、共感や深い相談が求められる場面では人の対応を残す。この役割分担が、これからの店舗体験を考える上で重要になります。
Z世代の購買行動から見えてくるのは、リアルとデジタルを分けて考えるだけでは、十分に届きにくくなっているということです。
オンラインで情報を集め、AIを活用し、実店舗で体験し、信頼できる情報を見極める。そうした高度で複雑な行動の中でブランドが選ばれるためには、接点ごとの施策をなめらかにつなぎ、一貫した体験として設計していく必要があります。
ビーツは、今回の視察で得た最新のリテールトレンドを日本市場の文脈に合わせて形にし、新たなブランド体験の場づくりを支援していきます。
「Z世代に届く売場をつくりたい」「オンラインとオフラインを連動させた販促施策を設計したい」「店舗空間やデジタルサイネージを活用してブランド体験を高めたい」など、次世代の店舗づくりにおける課題がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
「NRF 2026」のダイジェストレポートを公開しています。全29ページにわたる主要セッションの詳解と注目企業12社のソリューション分析を、ぜひダウンロードしてお役立てください。
本連載のベースとなっているオリジナルレポートは、株式会社ビーツとワールド・モード・ホールディングス株式会社による共同編集企画です。
当社代表取締役社長の柏木 又浩、および執行役員・西村 幹太がニューヨーク現地で取材した詳細なレポートは、ファッションビジネスメディア「Oui Speak Fashion® Japan」にて順次公開されています。本考察と合わせて、両社の視点が詰まった本編レポートもぜひご覧ください。
オリジナル記事
第5回:Z世代の心を掴む ― デジタルネイティブの本音から読み解く次世代リテールの羅針盤
本共同編集企画について詳しくは以下のページをご覧ください。
Oui Speak Fashion® Japan https://ouispeakfashion.com/jp/
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