Voiceインタビュー・対談・考察

【NRF 2026考察 #01】デジタルは「裏方」へ。今、リテールが立ち返るべき「人間らしさ」

tags

AINRF2026レポート空間デザイン

はじめに

世界最大のリテール展示会「NRF 2026」がニューヨークで開催されました。

本記事は、ファッションビジネスメディア「Oui Speak Fashion® Japan」に寄稿したレポートをベースに、当社代表取締役社長の柏木 又浩、および執行役員の西村 幹太をはじめとした海外視察チームの視点を加え、ビーツ独自の考察としてお届けするものです。

今回の記事は、米国のアウトドア用品小売大手REIの社長兼CEO、メアリー・ベス・ロートン(Mary Beth Laughton)氏による基調講演「Ascending Together: Driving Growth, Community, and Innovation at REI」での議論をもとに構成しています。

「リテール領域の顧客体験を共創する」をミッションに掲げる私たちが、この講演から得た視点をどう日本の売場づくりに落とし込んでいくべきか、そのポイントをまとめました。

テクノロジーは「主役」から「最高の裏方」へ

REIのメアリー・ベス・ロートン氏は、講演の中で「信頼」と「コミュニティ」の重要性を強調しました。

効率を追求してデジタル化を進めるほど、顧客が求めるのは人間への信頼であるという事実。REIでは、最新テクノロジーを導入する最大の目的を、「スタッフが顧客とつながるための時間を確保すること」に置いているといえます。

AIはデータに基づき効率化を図れますが、顧客の不安に寄り添い、情熱を共有するような「共感」を再現することはできません。アルゴリズムによる推奨(レコメンド)には代替できないリアル店舗の価値。それこそが、「正解を出すAI」ではなく「納得感をつくる人間」への投資であり、今リテールが立ち返るべき本質的なテーマとなっています。

REIが説く、コミュニティと信頼を育むためのデジタル

この「人間らしさ」の重要性を象徴していたのが、REIにおける「グリーンベスト」と呼ばれる専門知識を持ったスタッフの存在です。

彼らはテクノロジーを導入しつつも、その目的を「効率化」だけに留めず、グリーンベストを「アウトドアへのヒューマンAPI(独自の資産)」として位置づけています。さらに特筆すべきは、この人的資本を店舗内に留めるのではなく、デジタルプラットフォームへと戦略的に統合している点です。
スタッフが執筆した製品の推薦文や、彼らが出演するハウツービデオをオンラインストアに掲載するなど、デジタルの力を「人間の専門知識や情熱を増幅させるツール」として活用しています。主役である人間をデジタルが裏方として支え、オンラインとオフラインを融合した信頼関係を構築しているのです。

BEEATS VIEW:デジタルを「背景」に、人間を「主役」にする売場

REIが掲げる「デジタルを背景に退かせる」「テクノロジーで人間を増幅させる」という視点は、店舗空間や什器、接客ツールの開発、そしてPOPUPをはじめとするイベント運営などを担う私たちにとっても、重要な指針になります。私たちは、この思想を現場へ落とし込むために必要な要素を次のように捉えています。

  • 対話を加速させる空間設計

スタッフがデジタルと対話を繋ぐ役割を果たすには、単なる陳列棚ではなく、顧客と同じ目線で語り合えるカウンターや実演スペースなど、自然な対話を生むための「場の仕掛け」が不可欠。

  • 接客を邪魔しない「裏方」のデジタル

ツールが接客の主役にならず、スタッフの専門知識をさりげなく補佐する役割に徹すること。スタッフが画面操作に追われるのではなく、顧客と向き合う時間を最大化する仕組みを追求。

  • 専門性を裏付ける「本物」の質感

REIが、流行に流されない「本物(オーセンティック)」の製品提供をブランドの信頼性の基盤としているように、店舗空間もまたその専門性を裏付ける場であるべきだと考えます。商品の魅力を確認しやすい什器づくりや、質感を正しく伝える照明設計。こうした細部へのこだわりがアドバイスの説得力を高め、顧客との信頼を強固にします。

すべての接点を「ブランドの想いが正しく届く形」へと編み直していくことが、これからの場づくりには欠かせない視点となります。

ブランド体験を共に創る

ビーツは、今回の視察で得た最新のリテールトレンドを日本市場に合わせて形にし、新たなブランド体験の場づくりを支援していきます。

デジタルを活用しつつブランドらしい温度感のある店舗をつくりたい、スタッフの価値を高める場をプロデュースしてほしいなど、次世代の売場づくりにおける課題がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

NRF2026レポート公開中「エージェント・コマースの幕開け」

「人間らしさ」を支える裏方として、そして効率を極めるエンジンとして、AIの進化もまたリテールの未来を形作るもう一つの潮流です。

今回のNRFはGoogleのCEOが初登壇し、AIが商品選定から購入までを完結させる共通規格「UCP」を発表するなど、買い物の起点が「検索」から「AIとの会話」へ移り変わる歴史的転換点となりました。
本資料では、従来比2〜3倍の成約率を実現したAIチャットの実力や、店舗作業を25%削減し接客へ還元したHugo Bossの事例など、AIを実務の基盤へ組み込むための具体策が収録されています。

全29ページにわたる主要セッションの詳解と注目企業12社のソリューション分析を、ぜひダウンロードしてお役立てください。

海外レポート共同編集企画について

本連載のベースとなっているオリジナルレポートは、株式会社ビーツとワールド・モード・ホールディングス株式会社による共同編集企画です。

当社代表取締役社長の柏木又浩、および執行役員・西村幹太がニューヨーク現地で取材した詳細なレポートは、ファッションビジネスメディア「Oui Speak Fashion® Japan」にて順次公開されています。本考察と合わせて、両社の視点が詰まった本編レポートもぜひご覧ください。

オリジナル記事
第1回:REIはいかにして「信頼」を基盤に小売の未来を築くのか

本共同編集企画について詳しくは以下のページをご覧ください。

Oui Speak Fashion® Japan https://ouispeakfashion.com/jp/

このインタビュー・対談・考察をシェアする

X