SaaS企業こそ「企業DM」を再注目すべき理由~新たなリード獲得戦略

今日のSaaS企業のBtoBマーケティングは、どうしてもデジタル施策に偏りがちになります。
コンテンツマーケティング、Web広告、メールマーケティングなど、オンラインでの施策がリード獲得の主戦場になっています。
しかし最近、「オンラインの効率が頭打ち」という声も増えています。
競合が増え、CTR(クリック率)は下がり、CPA(獲得単価)は上がる一方。
その結果、どれだけ広告を出しても“見られない・届かない”という課題に直面している企業も少なくありません。
そこであらためて注目されているのが「企業DM(ダイレクトメール)」です。
アナログ手法のDMは、デジタル施策では得にくい“物理的な接点”を作り、記憶に残りやすい効果があります。
今回の記事では、「企業DM」の基本を整理したうえで、SaaS企業がなぜ今この手法を見直すべきなのか、どのように活用すべきかを解説します。
企業DMの定義とBtoCとの違い
1. 企業DMの定義と特徴
一般的なDMとは異なり、企業DMはビジネス上の課題解決を目的とした商品やサービスの案内が中心となります。
企業DMの最大の特徴は、受け取り手が企業の担当者であるため、個人的な感情よりも論理的な判断基準で評価される点にあります。そのため、感情的な訴求よりも、以下の要素を重視したコンテンツ作りが求められます。
2. BtoBとBtoCのDMアプローチの違い
BtoB(企業向け)とBtoC(個人向け)のDMには、アプローチ方法や内容に大きな違いがあります。

SaaS企業のBtoB DMでは、実際の利用者と購入決定者が異なることが多いため、現場の課題解決と経営層の投資判断の両方を満たすメッセージ設計が極めて重要になります。
なお、BtoCの場合は購買決定者と利用者が一致するため、メッセージ設計の考え方も異なります。
例として、下記のBtoC事例をご覧ください。

3. 企業DMと法人DMの違い
DMを語る上で混同されやすいのが、「法人DM」との違いです。
企業DM:企業間マーケティング目的のダイレクト施策全般(郵送、デジタル、FAXなど幅広い形式を含む)。認知拡大や関係性構築も含む。
法人DM:営業担当者が営業施策に限定して行うダイレクト施策。個別案件の掘り起こし、アポイント獲得に特化。
本記事で扱う「企業DM」は、マーケティング部門が主導し、SaaS企業のリード獲得や関係構築を目的とした戦略的なコミュニケーションチャネルを指します。
SaaS企業が「企業DM」を見直すべき理由
オンライン施策が飽和しつつある今、企業DMがもたらす物理的なアプローチは、SaaS企業に以下の3つのメリットをもたらします。
1. DMは物理的な接点により“記憶に残る接触”を生む
メールのようにフォルダに埋もれてしまうことがなく、紙のDMは実際に手に取ってもらえる存在感があります。
手で触れ、デスクに残ることで、デジタルよりもはるかに「記憶に残りやすい接触」を顧客にお届けします。
情報過多の時代だからこそ、この「リアルな体験」が、ブランドの認知や印象を強く残す差別化要素となります。
2. ABM戦略(ターゲット企業限定マーケティング)との親和性が高い
特定の高単価企業を狙うABM (Account Based Marketing)戦略において、企業DMは最も効果的なツールの一つです。
ターゲットとなる特定企業に、パーソナライズされたDMをピンポイントで送付することで、Web広告のように同質の内容が不特定多数に届く施策よりも、商談化の確度を高めることができます。
ABM:優良顧客・企業に対して、個別のアプローチを行う営業方法
3. オンライン施策の補完的な役割
多くのSaaS企業がWeb広告やメール施策でリーチできない「非アクティブ層」や「休眠リード」が存在します。企業DMは、これらの層に対して新しい角度から再接触を試みる強力な手段となります。
デジタルとの連携により、DMを起点としたオンライン行動を計測することも可能です。
SaaS企業がDMを活用できる3つのシーン
SaaS企業が企業DMを組み込むべき具体的なシーンは、リード獲得から顧客維持に至るまでの3つの段階にあります。
1. ABM施策:特定企業へのパーソナライズDMで商談化率アップ
SalesforceなどのCRMデータから、特にアプローチしたいターゲット企業を抽出し、その企業の業種・課題に合わせたパーソナライズDMを送付します。
Webサイト上の情報や競合の動向を分析し、1to1メッセージを組み込むことで、担当者の心に響き、商談化率を高めます。
2. 休眠リードの掘り起こし:紙DM+QRで再接触
過去に資料請求やウェビナー参加があったものの、現在はメールも開かない非アクティブな休眠リードは、どのSaaS企業にも存在します。
デジタル施策が効かない層に対し、紙のDMを送り、DMにQRコードやパーソナライズされたURLを付けることで、Webサイトへの再誘導を試みます。物理的な接点が再接触のきっかけとなり、リードを再びアクティブな状態に戻します。
3. アップセル・クロスセル施策:既存顧客のフォローやプラン拡張
既存顧客に対しても、DMは重要です。利用状況のフォローアップや、上位プラン、関連サービスへのアップセル・クロスセルを促すDMを送付します。
特に契約更新前などに、感謝のメッセージや新しい活用事例を手紙として送ることで、顧客満足度と顧客維持にも貢献します。
デジタル連携で進化する「企業DM」:戦略的接触チャネルへ
現代の企業DMは、単なる郵送物ではありません。デジタルツールと連携することで、オンライン広告と同様に効果測定とPDCAサイクルを回すことが可能になっています。
1. MA/CRMと連携したデータ活用
DM送付後のWebサイト訪問、資料ダウンロードといった開封・流入・反応をCRMやMAツールで一元的に可視化し、次の営業アクションにつなげます。
2. QR・URLトラッキングによる流入分析
DMに固有のQRコードやトラッキングURLを記載することで、「どのDMから」「誰が」「いつ」流入したのかを正確に計測できます。
3. オンライン広告同様にPDCA可能
ターゲット企業リスト、クリエイティブ(DMの内容)、シナリオ(DM後のフォローアップ)の各要素で効果測定を行い、データに基づいた改善(PDCA)を実行できます。
これにより企業DMは、単なるアナログな販促手段ではなく、戦略的なデジタルマーケティングの重要な構成要素となるのです。
企業DMを成功させる3つの設計ポイント
SaaS企業が企業DM施策を成功させるためには、デジタル施策同様に「設計」が重要です。
1. ターゲティング設計:「業種・課題」に基づくリスト精度
DMが「無駄なチラシ」にならないよう、誰に送るか「リスト」の精度を最大限に高めます。業種、企業規模、抱える課題などのデータに基づき、自社のSaaSが最も響く企業をCRMから抽出。キーパーソン(決裁者や利用担当者)の部署・役職までを特定し、DMの宛名を最適化します。
2. クリエイティブ設計:「課題→解決→体験」の構成
無形商材であるSaaSの魅力を伝えるため、DMの構成を工夫します。
【課題提起】ターゲット企業が持つ具体的な課題に寄り添い、共感を呼ぶ。
【解決提示】自社のSaaSがその課題をどう解決できるかをシンプルに伝える。
【体験誘導】デモの案内や事例記事など、次のステップ(Web誘導)へのフックを明確にする。
加えて、サービスの特徴やブランドイメージに合わせたデザインを心がけることも大切です。
3. シナリオ設計:DM後のWeb誘導・MA連携の事前設定
DMは「送って終わり」ではありません。DMを起点とした次の行動を設計します。
●DMに記載したQRコードからの専用LPへの誘導。
●LPに訪れたリードに対し、MAツールを連携させて特別なナーチャリング(育成)メールを自動配信する設定。
DM施策の効果を最大化するためには、「オフラインからオンラインへつなぐ一連のシナリオ」を事前に作り込むことが成功の鍵となります。
まとめ|SaaS企業におけるDMの新常識
SaaS企業のマーケティングにおいて「企業DM」は、
●従来からの「紙の広告」を超えて「戦略的接触チャネル」である。
●オンライン偏重のSaaS企業にとって、差別化を図る要素となる。
●ABMや顧客維持(アップセル・離反/解約防止)施策としての活用価値が極めて高い。
そんな役割と価値が再定義されつつあります。デジタル施策を主軸としながらも、最も確度の高いターゲットにはあえてアナログな手法で深い関係性を築く。これが、これからのBtoBマーケティングにおけるSaaS企業の新常識と言えるかもしれません。
企業DMから展示会まで、リード開発はビーツに相談!
ビーツは48年以上にわたり、企業のさまざまな販促・マーケティング課題の解決を支援してきたプロフェッショナルです。近年はSaaS企業様の展示会企画・施工など、リード開発のお手伝いを多くサポートしております。
マーケティング課題に新しいソリューションをお求めに方は、ぜひ一度ご相談ください。
