「キダルト」とは? ―トレンドの裏にある子ども心をもつ大人たちの心理をマーケティングに

「おもちゃは子どものもの」という常識が、崩れ去ろうとしています。少子化が進む日本において、多くの企業が新たなターゲット層の開拓に奔走する中、熱視線を浴びているのが「キダルト(Kidult)」と呼ばれる層です。
Kids(子ども)と Adult(大人)を掛け合わせたこの言葉は、単なる「懐古趣味」ではありません。彼らは経済力を持ち、自身の満足のためには投資を惜しまない、極めて有力な顧客層です。
今回は、データと事例から紐解くキダルト市場の現在地と、私たちマーケターがこのトレンドの裏にある心理をどう捉え、実際の「売り場」や「体験」に落とし込んでいくべきかについて解説します。
「キダルト(Kidult)」とは何か? 市場規模とターゲット層
まずは言葉の定義と、市場の実態を整理しましょう。
キッズ+アダルト=「子ども心を持つ大人」たち
キダルト(Kidult)とは、Kid(子ども)とAdult(大人)を掛け合わせた造語です。かつては「大人になりきれない人」といったニュアンスで使われることもありましたが、現在は「子ども時代に親しんだ玩具やエンターテインメントを、大人になっても(あるいは大人になってから)積極的に楽しみ、消費する層」として、マーケティング上極めて重要なターゲットとして再定義されています。
ターゲットは「30〜40代」が中心。その数、約535万人
キダルト市場のメインプレイヤーは、経済的に自立し、自由に使えるお金を持つ20代後半〜40代です。
株式会社ハピネットが2025年に発表した調査(※1)によると、日本国内のキダルト人口は約535万人、市場規模は約780億円に達すると推計されています。
彼らの特徴は、「懐かしさ(ノスタルジー)」と「大人買い(経済力)」です。幼少期に買ってもらえなかった憧れの商品を、自分の財力で手に入れる。このカタルシスが、強力な購買動機となっています。
※1出典 株式会社ハピネット プレスリリースより:【キダルトに関する実態調査】キダルト市場は800億円弱、キダルト人口は535万人規模と推定 | 株式会社ハピネットのプレスリリース
なぜ今、大人は「おもちゃ」に回帰するのか?
キダルト消費を牽引しているのは、ストレス社会における「癒やし」への渇望と、SNS時代の「自己表現」です。
1. 高単価でも売れる「アート/インテリア」化
象徴的なのが「シルバニアファミリー」の事例です。かつては女児向け玩具の代表格でしたが、近年は大人をターゲットにした商品開発が進んでいます。5万円を超える高額なセットや、インテリア性の高い商品が登場し、ヒットを記録しました。 これらは単なる遊び道具ではなく、大人の部屋に飾っても遜色のない「インテリア」や「アート」として価値づけされています。
2. 「ぬい活」「平成レトロ」などに見るコミュニティ文化
キダルト消費は、SNSトレンドとも深く結びついています。ただ商品を所有するだけでなく、SNSで発信し、誰かと「好き」を共有するまでがセットになっているのが特徴です。
特に20代〜30代女性の間では、かつての女児カルチャー(メゾピアノやラブandベリーなど)や、平成初期のギャル文化を「エモい」「かわいい」として再解釈し、消費する動きが活発化しています。
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業界の動き:流通・小売も「大人」へシフト中
メーカーだけでなく、売り場側もこの変化に対応し始めています。
トイザらス:「キダルト専門店」の展開を開始。子ども向け玩具店のイメージを脱却し、大人をターゲットとした商品構成へ舵を切りました(※2)。
イトーヨーカ堂:売り場改装の戦略としてキダルト層の取り込みを強化。ファミリー層だけでなく、単身の大人の趣味層を店舗へ呼び込む狙いです(※3)。
日本おもちゃ大賞:2023年に「キダルト部門」を新設。玩具業界自体が、「大人がおもちゃで遊ぶこと」を公式に推奨・評価するフェーズに入りました。
※2出典 日本トイザらス株式会社リリースより:日本トイザらス、キダルト(子どもの心を持った大人たち)に大人気の「ブラインドボックス」の品揃えをさらに32店舗で強化! | 日本トイザらス株式会社のプレスリリース
※3出典 イトーヨーカ堂リリースより:イトーヨーカ堂の反転攻勢 子ども心を持つ大人「キダルト」層狙う新業態
マーケターへのヒント:キダルトに響く「売り場」と「体験」
私たちマーケティング・販促担当者は、この心理をどう活かせばよいのでしょうか? キダルト層にとって魅力的な売り場やPOP-UPイベントを作るための、3つの視点をご提案します。
1. 「没入感(Immersive)」のある世界観づくり
キダルト層は、商品そのものだけでなく、その世界観に浸る「体験」を買っています。 商品を棚に陳列するだけでなく、大人の部屋をイメージしたインテリアコーディネートの中に商品を配置するなど、「自分の生活空間に置いたらどうなるか」を想像させるディスプレイが有効です。
2. 「シェア」したくなる撮影スポットの設置
「ぬい活」層にとって、写真は必須アイテムです。 イベントや売り場には、ぬいぐるみやフィギュアを置いて撮影できる専用のフォトスポット(ぬい撮りスポット)を用意しましょう。背景やライティングにこだわった「映える」ブースがあるだけで、SNSでの拡散力(UGC)は格段に上がります。
3. 「アップデート」された懐かしさの提案
単に昔の商品を復刻するだけでは、現代の大人の心は掴みきれません。 「子どもの頃に憧れた魔法のステッキが、高品質なコスメになった」「あの頃のキャラクターが、オフィスでも使える文具になった」など、今のライフスタイルに馴染む形への変換が、購買の最後のひと押しになります。
結論:キダルト消費を捉え、LTVを高める重要性
キダルト層は、一度そのブランドやコンテンツのファンになれば、継続的に購入し、熱量高く発信してくれる「ロイヤリティの高い顧客」になり得ます。
子ども向け売り場の延長戦ではなく、「大人のための趣味の場」として売り場や体験をリデザインすること。それが、少子化時代の小売・流通業界において、新たな成長曲線を描くための鍵となるはずです。
キダルト的感性に寄り添うプロモーションを、ビーツと一緒に
データやトレンドは理解できても、「実際に売り場でどう表現するか」「どんなイベントならSNSで拡散されるか」の設計は、一筋縄ではいきません。
ビーツは、リアルな売り場づくりや体験型イベントのプロフェッショナルです。 「没入感のあるディスプレイ」から「ぬい撮りしたくなるフォトスポットの施工」まで、大人の遊び心を刺激する空間づくりをトータルでサポートします。
貴社の商材が持つポテンシャルを、キダルト層へ最大限に届けるために、ぜひ一度、私たちにご相談ください。
