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共感を集める「キャンセル界隈」広がる日常の“やめる選択”

リテールボイスがお届けするZ世代の感性に寄り添うトレンドレポートとして、今回は「キャンセル界隈」に注目します。

「風呂キャンセル界隈」は前から知られていましたが、ここ最近は「コンロキャンセル界隈」「残業キャンセル界隈」という言葉をSNSやニュースサイトでも見かけるようになりました。身近な“やめる選択”が次々と話題になっていて、背景が気になる人も多いのではないでしょうか。

この記事では、なぜキャンセル界隈がここまで広がりを見せているのか、その背景と共感される理由を整理します。さらに、企業がどのようにプロモーションに活用しているのかを紹介し、「やめる」が共感を生む時代にどんなアプローチが求められているのかを考えます。「○○キャンセル界隈」が気になる方は、ぜひ最後までお読みください。

目次

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「キャンセル界隈」とは

お風呂キャンセル界隈イメージ

キャンセル界隈とは、予定や習慣を“やめた”ことをあえて言葉にして共有する時に使われる表現です。

「今日はやめた」という行動に名前をつけることで、同じ経験をした人たちが共感しやすくなります。
「風呂キャンセル界隈」が話題になって以降、さまざまな○○キャンセル界隈という言葉が生まれており、たとえば、こんなバリエーションがあります。

・風呂キャンセル界隈:疲れてお風呂に入らず寝る
・コンロキャンセル界隈:火を使う料理をやめてレンチンや惣菜で済ませる
・外出キャンセル界隈:外出する予定をやめて、自宅で過ごす
・ごはんキャンセル界隈:食事をとらずに過ごす
・健康キャンセル界隈:健康志向から離れて、ジャンクフードや高カロリーな食事を楽しむ
・残業キャンセル界隈:残業せずに定時で帰宅する

もともとは個人のつぶやきでしたが、「界隈」がZ世代の共通言語となり「○○キャンセル界隈」と表現されることで同じ行動・考えの投稿が見つけやすくなり、共感の反応やリアクションも広がりやすくなりました。

なぜ「キャンセル界隈」が共感を集めるのか

キャンセル界隈がここまで広がっている理由は、大きく3つあります。

1.SNSで可視化・共有しやすくなった
「お風呂をやめた」「定時で帰った」といった投稿は、ちょっとしたつぶやきでも共感を集めやすく、いいねやリプライがつくことでポジティブに受け止められます。かつては個人の中で完結していた行動が、SNSで言葉として共有されることで“仲間がいる”と感じられるようになりました。

2. 「やめる選択」が肯定される時代になった
昔は「だらしない」「頑張っていない」と見なされることも多かった“やめる選択”ですが、今はライフワークバランス重視や自己肯定感の高まりもあり、ポジティブに語られるようになっています。
特にZ世代は、効率や自分のペースを大切にし、やらないことを選ぶのも自分らしい判断として受け入れます。

3.社会的価値観のシフト
「残業=頑張っている」などの旧来の価値観から、働き方改革や休息の重要性が重視される時代へとシフトしました。この変化が「残業キャンセル界隈」のような言葉の広がりを後押ししています。

「キャンセル界隈」はどう広がったのか

キャンセル界隈の代表例として最初に大きく注目されたのが「風呂キャンセル界隈」です。

2024年の春ごろに個人のつぶやきが端を発し、風呂キャンセル界隈というワードが発生しトレンドに。SNSでは「今日は風呂キャンします」「もう寝たい、風呂キャンセル界隈に入会します」など、疲れや面倒くささから入浴をスキップすることを報告する投稿が相次ぎ、共感が集まりました。このブームについて、ニュースサイトやテレビなど複数のメディアでも紹介されるようになりZ世代だけではなく幅広い世代に認知されました。

この現象がきっかけで、○○キャンセル界隈というワードと投稿は、ごはんキャンセル、健康キャンセル、睡眠キャンセル、外出キャンセルなど、ほかの生活行動にも広がりました。この広がりは現在も継続しており、バイドゥ株式会社が2025年6月に発表したZ世代が選ぶ「Simeji上半期トレンドランキング」では、「○○キャンセル界隈」がバズった言葉部門の3位にランクインしています。

この現象を押し広げたのは、こんな要素です。

短くて具体的な投稿
 一言で状況が伝わるのでタイムラインで目に留まりやすい。
リアルタイムで共感が集まる仕組み
 その日の気分や行動を即発信できるため、同じタイミングで「わかる!」が返ってくる。
ユーモアが拡散を後押し
 ちょっと笑える自虐トーンが投稿のハードルを下げ、リポストやスクショでさらに広がる。

こうしてキャンセル界隈は、単なる個人のつぶやきを超えて、共感しながら拡散されるミーム(SNSやネット文化で共有・模倣されるネタや表現)として成長していきました。

「ミーム」についての説明

「キャンセル界隈」と界隈消費

キャンセル界隈は、単なる言葉遊びにとどまらず、実際の消費行動にも影響を与えています。
お風呂をやめる日にはドライシャンプーやボディシートを選ぶ人がいたり、コンロを使わない日には冷凍食品や惣菜、宅配サービスを活用するケースも目立ちます。”健康”をやめた日には、背徳感のあるジャンクフードを作って楽しむなど、やめる選択が新しい消費につながることが少なくありません。

こうした動きに合わせ、企業もミールキットや電子レンジ調理専用食品、布製で折りたたんで取り外し可能な浴槽など、「やめる選択」を前提にした商品や企画を増やしています。
キャンセル界隈は、共感の場であると同時に、新しい購買行動のきっかけにもなりつつある現象です。

企業が取り入れる「キャンセル界隈」の発想

キャンセル界隈の広がりは、企業のプロモーションや商品企画にも影響を与えています。
“やめる選択”をポジティブに置き換え、生活者の気持ちに寄り添う施策が次々と登場しています

事例1

資生堂×マツキヨココカラ&カンパニー「肌グミ」

2社の共同企画製品として2025年9月に数量限定販売された「肌グミ」は泡立て不要で肌になでるだけで汚れを落とせるグミ状洗顔料。15~29歳の女性の約半数が朝は洗顔料を使わない「洗顔キャンセル界隈」であるというデータに着目し、朝洗顔を負担に感じる層に向けて”新しい習慣”を提案しました。

事例2

和食レストラン「ごちそう村」自炊キャンセル界隈クーポン

夏休み期間限定で、自炊を“あえてやめる選択”を応援するキャンペーンを展開。エプロン持参で来店し、注文時に「自炊キャンセル界隈」と申告した人に、次回使える「自炊キャンセルチケット」と料理長考案の簡単レシピを配布。遊び心のある参加型企画となりました。

事例3

デリッシュキッチン「火を使わないレシピ特集」

2025年7月に公開された特集では、電子レンジや炊飯器で作れるメニュー、非加熱レシピを多数紹介。
「暑くて火を使うのがつらい」という夏場の調理の悩みに応える形で、コンロキャンセル界隈に向けた企画となっています。

事例4

SALONIA「#ドライヤーキャンセル界隈応援キャンペーン」

株式会社I-neは2025年2月、入浴後のドライヤーを面倒に感じる層に向けて公式Xでフォロー&リポストキャンペーンを実施。「ドライヤーキャンセル界隈」という言葉を使い、共感を呼びながら製品を訴求しました。

まとめ:キャンセル界隈=やめる選択に寄り添うマーケティングへ

キャンセル界隈は、サボることではなく“自分を大切にする選択”として共感を集めています。
無理をしない、効率的に暮らす、調子に合わせて行動する——そんな価値観に共鳴する人が増えている今、企業には「やめる選択」を咎めず、代わりの選択肢を提案する姿勢が求められます。
マーケターが意識すべきポイントは次の2つです。

◆「やめてもいい」と思える環境をつくるメッセージ設計
◆やめたあとに選べる商品や体験を用意するブランド体験

この2つを押さえることで、生活者の共感を呼び、購買や体験のきっかけをつくることができます。

キャンセル界隈を活用した企画づくりのヒント(ビーツより)

ビーツでは、日々さまざまな企業のプロモーションや空間設計に携わる中で、生活者の価値観の変化を捉えることを大切にしています。
キャンセル界隈のような「無理をしない」「今日はやめる」という選択がポジティブに語られる今、短時間でも立ち寄りやすい体験設計や、情報を自分のペースで受け取れる仕組みはますます重要になりそうです。
こうした視点を踏まえて、企画や店頭施策を考える際のヒントとしてお役立てください。

展示会ブースやポップアップストア、プロモーション企画についてご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

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ビーツでは、さまざまな企業のセールスプロモーションや展示会、ポップアップストアなど、リアルな場でのブランド体験づくりを多数手がけています。
最近ではZ世代に人気の韓国ブランドやキャラクターをテーマにしたポップアップストアも担当し、「思わず写真を撮りたくなる」仕掛けや、SNSにシェアしたくなる演出で、来場者が楽しめる空間を作ってきました。

展示会ブースやポップアップストア、プロモーション企画についてご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。

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